人工知能(Artificial Intelligence)のテクノロジーを使用することによって、企業のマーケティング活動を最適化する取り組みのことを、AIを活用したマーケティング(= AIマーケティング)と言います。
特に、中小企業においてその効果と可能性が注目されています。この記事では、ChatGPTやGoogleBardなどを使った「AIマーケティング」の基本的な知識と、実際の活用方法をご紹介していきます。
目次
AIマーケティングとは
ここで言う「AIマーケティング」とは、企業の営業・販売促進の取り組みに「生成AIツール」などのテクノロジーを応用することです。慢性的な人手不足に悩まされている国内企業においては、色々な分野でAIを活用することで効率化を図っていくことが重要視されていますが、それはマーケティング領域においても同様です。
近年の進歩が目覚ましい「生成AI」を使用すれば、市場動向の分析、ターゲットの具体化などのマーケティングにおける戦略立案の分野においても、日々忙しい企業担当者の手をわずらわせることなく実行することができます。
中小企業こそ「生成AIツール」を活用した方が良い理由
AIマーケティングは、中小企業だからこそ積極的に取り入れた方が良いと言えます。多くの中小企業では人員や予算が限られているため、十分なマーケティング活動を行うことができない場合が多いですが、「生成AIツール」を利用することで、戦略立案・コンテンツ作成などの作業を効率化することができます。
また、中小企業ではマーケティング人員がひとりということも珍しくなく、そのため新たなアイデアを得ることが難しいですが、生成AIを使ってチャットすることで新鮮なマーケティングノウハウを入手することもできます。
AIを使ったマーケティング活動のための具体的ノウハウ
「生成AIツール」を上手に使うことができれば、今まで複数のスタッフの手によって実行されていた膨大なデジタルマーケティングの作業の多くを、削減することができます。
例えば、記事コンテンツやメール原稿のドラフト作成はもちろん、マーケティングに精通している人でも、仕上げるのにはそれなりの時間を要する「ペルソナ像」「カスタマージャーニーマップ」の設計においてまで、工夫次第で力を発揮してくれます。
- 市場分析(PEST・SWOT分析等)
- ペルソナ像の抽出
- カスタマージャーニーマップの設計
- 文書作成(記事コンテンツ、メール原稿)
市場分析
企業のマーケティング活動において、市場環境がどのような状況であるかを理解しておくことは極めて重要です。またマーケットの中で、自社がどのような位置にあるかも改めて知っておく必要があるでしょう。その際に、よく使用される分析方法としてPEST分析・SWOT分析がありますが、これらの分析についても「生成AIツール」を使えばスピーディに実施することができます。
ペルソナ像
また、マーケティングにおいては、自社の製品サービスの対象となるターゲットがどのような人物像なのか、日々の業務においてどのような「悩み・困りごと」を抱えているかをしっかり想定した上で、デジタル広告や記事コンテンツを作り込んでいくことが重要です。
通常、既存顧客へのインタビューや営業メンバーからの意見を汲み取ることで、「ペルソナ像」を作っていくことになりますが、AIを使うことでそれほど手間をかけずとも、ある程度の目安を固めることが可能です。
カスタマージャーニーマップ
さらにマーケティング活動では、ペルソナ像が固まったら製品サービスとの接触ポイントから心理変容の流れを段階的に分けて書き出した「カスタマージャーニーマップ」を作成することになりますが、これも企業担当者としては手間のかかる作業です。ですが、AIを活用すれば効率的にドラフト版を作成することができます。これをもとにブラッシュアップすれば早い段階で、マーケティング方針を固めることができるでしょう。
文書作成
AIは、「記事コンテンツ」や「メール原稿」のドラフトを作成する場合にも役立ちます。正しい命令をすることによって「生成AIツール」は、ペルソナ像やカスタマージャーニーマップを考慮した上で、ドラフトとなる文書を提案してくれます。従来だと人の手によって情報収集から構成作成〜本文執筆などそれなりに時間のかかる作業ではありますが、AIを使えば速やかにコンテンツを作成することができます。
生成AIを使ったデジタルマーケティングの実行ステップ
ここまでの流れで、企業のマーケティング活動においてAIを活用することがいかに有益であるかを、ご理解いただけたと思います。では実際に、AIマーケティングを実行する際にはどのようにステップを進めていけば良いでしょうか。
AIマーケティングを実行する際には、まずは「ツール選定」、その次に「プロンプト作成」が重要となってきます。
①ツール選定
生成AIツールといっても色々な種類があります。テキストはもちろんのこと、画像・イラスト等の生成に特化したもの、音声生成できるツールなどもあります。 その中でも、ビジネスの現場においても普及しつつある代表的なツールと言えば以下のものになるでしょうか。
特に、OpenAI社が開発した「ChatGPT」は、広く使われています。
- ChatGPT(チャット・ジー・ピー・ティ)
https://chat.openai.com/ - Google Bard(グーグル・バード)
https://bard.google.com/ - BingAI(ビング・エーアイ)
https://www.bing.com/ - Google SGE(Search Generative Experience)
https://labs.google.com/search/
②プロンプト作成
生成AIツールを選択したら、次はどのように命令をするかを設計する必要があります。深く考えずに思いつくまま入力スペースに指示内容を打ち込んでいけばそれで大丈夫ですが、より希望するかたちの回答を得ようとするならば「プロンプト」という命令形式に則ってテキスト入力するのが効果的です。
- AIプロンプト(prompt)= 動作するようにうながす、手助けする、迅速な、素早い、遅れのない、などの意味を持つ語句。コンピュータの世界では、主にユーザーが「コマンド」を実行するための命令文・文字列のことを指す。
AIマーケティングのプロンプト例
ここでは以下に、「ペルソナ像」を書き出すときのプロンプト例を用意してみました。ここでは、中小企業のマーケティング担当者を対象として、「マーケティングオートメーション」を題材としています。このプロンプト例を、ChatGPTやGoogle Bardなどの生成AIツールの入力スペースに貼り付けることで「ペルソナ像」のドラフト版を作成することができます。
#ペルソナのインサイト(深層心理)の作成ルール
・ペルソナは、できるかぎりデータを引用しながら、納得できる「理由」や数値的な 「根拠」を明確にする
・ペルソナは、必ず日本語を使って作成する。不自然な日本語は使用しない、 カタカナの専門用語はなるべく記述しない
・ペルソナは、#顧客/リードの属性情報をもとにしながら、それらがどのようなことを 考えているかの心理部分にフォーカスして出力する
・ペルソナが、職場・仕事での「ミッション達成」において感じている 「課題・困りごと・悩み」「希望・願望」などを類推して記述する
・ペルソナが、職場・仕事において「#製品サービスのカテゴリ(分野)」の必要性を 感じられるかどうかを類推して記述する
・ペルソナが、「#製品サービスのカテゴリ(分野)」の必要性を感じる場合に、 どの部分に魅力を感じるかを類推して記述する
・ペルソナが、「#製品サービスのカテゴリ(分野)」を決裁承認のうえで 社内導入する際の「障壁」になることを類推して記述する
・ペルソナが、多数のプロダクトが存在する「#製品サービスのカテゴリ(分野)」の 中から社内導入を判断・選定する「価値基準」を類推して記述する
・ペルソナが、そのほか職場・仕事において抱えてそうな「課題・困りごと・悩み」 「希望・願望」を記述する
・ペルソナは、一気に全部の文章を出力できなくても「続きを出力する」という命令を 受けながら、分割しつつできるだけ詳しく出力する
#製品サービス名
BowNow(バウナウ)
#URL
https://bow-now.jp/
#製品サービスのカテゴリ(分野)
マーケティングオートメーション(MA)
#製品サービスのカテゴリ(分野)の説明
マーケティングオートメーションツール(以下、「MAツール」)とは、マーケティング業務を自動化することで業務効率化、生産性向上を図るツールである。個人を特定し、それぞれに対して適切なマーケティングアプローチを行うことによって、商材に対する興味・関心、購買意欲を喚起させることができる。このツールの運用を行うには、把握する個々人に対する施策や属性管理を行なえる要素や方法論が企業内で必要であり、顧客個人を特定する必要がないか、または営業員によるフォローアップによって成約確率を上げる必要がない低単価消費財のマーケティングには適さない。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3)
#顧客/リードの基本属性
規模: 日本国内の中小企業
業種: 特に業種は限定しない
担当者の部署: 営業部とデジタルマーケティング部
出力例
下記は、実際にChatGPTにて生成された「ペルソナ像」のサンプルとなります。
題材によって、「製品サービス名」「URL」「製品サービスのカテゴリ(分野)」「顧客リードの基本属性」を変えることでペルソナ像も変わってきます。一回でしっくり来る回答にはならないかも知れません。試行錯誤しながら自分なりに使いやすいようにAIプロンプトを手直ししながらペルソナ像を固めていきましょう。
まとめ
AIマーケティングは、今後も人工知能テクノロジーの発展によって大きく進化していくと予想されます。よりスピーディに膨大な情報処理ができるようになることで、「ペルソナ像」や「カスタマージャーニーマップ」の精度も上がっていくでしょう。そうなれば、デジタルマーケティング活動にあまりマンパワーを投入できない中小企業の担当者にとっては、なくてはならないパートナーとなっていくと考えられます。
自社のデジタルマーケティング強化のためにも、まずは何らかの「生成AIツール」を試しに使ってみましょう。