マーケティングとは、企業活動において商品やサービスが売れる仕組みを構築することです。具体的には、市場調査や商品開発、宣伝開発、ブランディング、営業・販促、カスタマーサポートなど、商品を効率的に売るための経済活動すべてを指します。
マーケティングは企業が事業を存続するうえで欠かせないものですが、意味はなんとなく理解しているものの、定義や戦略の立て方といった実際の手法まではわからないという方も多いのではないでしょうか。デジタル技術の発展により、近年注目を集めているデジタルマーケティングやWebマーケティングといった、◯◯マーケティングが複数存在するのも、その一因だと考えられます。
そこで本記事では、マーケティングの基礎知識から活動内容、戦略の手順、フレームワークまで網羅的にわかりやすく解説します。
目次
マーケティングの定義
マーケティングの定義はひとつに定まっておらず、提唱者によって意味合いが異なります。なぜならば時代の移り変わりとともに、マーケティングの捉え方や考え方は常に変化してきたからです。そこで本項では諸説ある定義の中で、代表的なものについて紹介します。
まず1990年の日本マーケティング協会では「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」と定義しています。
「近代マーケティングの父」と呼ばれた経営学者のフィリップ・コトラー氏は、「マーケティングとは、人間や社会のニーズを見極めてそれに応えることである。マーケティングを最も短い言葉で定義すれば、『ニーズに応えて利益を上げること』となろう」(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント第12版」2014)と定義しています。
マネジメントの発明者として有名な経営学者ピーター・ドラッガー氏は、「マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、自ら売れるようにすることである。」(『マネジメント』)と述べています。
このようにマーケティングにはさまざまな定義がありますが、これらの定義を総合すると、まずマーケティングは一部門で担うものではなく企業全体として取り組むものであること。次に顧客のニーズに応えた価値を創造し、顧客が自然と商品やサービスを買いたくなるような状態を作ることこそがマーケティングの本質であるとしています。
マーケティングの歴史
次にマーケティングの歴史について振り返ってみましょう。マーケティングの歴史は非常に古く、19世紀末にアメリカで誕生しました。19世紀はイギリスで始まった産業革命によって、製品の大量生産が可能になった時期です。鉄道と通信網の発達により、アメリカ全土が市場になったことから、多くの人に効率よくモノを売るための方法論が必要となり、マーケティングという言葉が用いられるようになりました。
マーケティングは時代とともに進化を遂げていき、現在はマーケティング4.0という概念が主流になっています。この概念を定義したのはフィリップ・コトラー氏です。本項ではマーケティング1.0から4.0までの変遷について解説します。
1.マーケティング1.0(1900年~1960年)
マーケティング1.0は、「製品中心」のマーケティングです。1900年代は需要が供給を上回っていたことから、市場のニーズは考慮されず、安価な商品やサービスを大量に売り、利益の最大化を図ることが目的とされていました。製品と価格を需要でコントールできたこの時代は、顧客よりも企業が優位な立場にあったといえます。
そのためこの頃のマーケティングは、大量生産・大量販売を前提に、不特定多数の消費者に向けて画一的なアプローチを行うマスマーケティングがメインでした。
2.マーケティング2.0(1970年~1980年)
マーケティング2.0は、「顧客中心」のマーケティングです。1970年代に入ると経済が豊かになり、主導権が企業から顧客へと移るようになります。また技術の進化により、商品のコモディティ化(平均化)が進み、価格面での差別化が困難になりました。
その結果、安価な製品を大量に売るというマスマーケティングが通用しなくなり、顧客を満足させる製品の開発やマーケティング戦略が求められるようになりました。
3.マーケティング3.0(1990年~2000年)
マーケティング3.0は、商品やサービスに付随する「価値」志向のマーケティングです。1990年に登場したインターネットの普及と市場の成熟化により、顧客は企業を選択できるようになり、商品購入の際、その商品が「どのようなビジョンで作られているのか」「環境や社会にとってどのような価値があるのか」という企業の社会的責任も重視するようになりました。
背景には国際化によって地球温暖化や貧困問題などさまざまな社会問題が消費者に認知されるようになったことが挙げられます。消費者の価値観の変化により、企業は商品を作って売るだけの存在から、社会とより良い関係を築く存在になることが求められるようになったのです。
マーケティング3.0を取り入れている企業は多く、たとえばファッションブランドのマザーハウスでは、途上国の素材と職人の手仕事から生まれたバッグ・ジュエリー・アパレルを販売しています。マザーハウスで販売している商品を購入することで、途上国の人々を間接的に支援できる「ソーシャルポイントカード」を導入しており、売上の一部を社会貢献事業に役立てています。
4.マーケティング4.0(2010年~)
マーケティング4.0は、「自己実現」のマーケティングです。2010年代になると、消費者は企業に社会的問題への配慮に加えて、「自己実現」を満たす商品やサービスを求めるようになりました。
この「自己実現」という概念は、アメリカの心理学者、アブラハム・マズロー氏によって考案された心理学理論「欲求5段階説」に基づいています。同氏は「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である」と仮定し、人間の欲求を5段階のピラミッド構造で表しています。
欲求の段階は最下層から「生理的欲求」「安全欲求」「社会的(所属・愛)欲求」「尊厳(自尊・承認)欲求」「自己実現欲求」で構成されます。
自己実現欲求 | 自分にしかできないことを成し遂げたい、自分らしく生きていきたいという欲求 |
---|---|
尊厳欲求 | 他者から認められたい、価値ある存在として受け入れられたいという欲求 |
社会的欲求 | 他者と関わりたい、集団に所属したいという欲求 |
安全欲求 | 心身の安全が確保された環境で生きたいという欲求 |
生理的欲求 | 食欲や睡眠欲など人間が生きていくための必要最低限の欲求 |
ピラミッドは、最下層の「生理的欲求」から1段ずつ欲求を満たしていくことで、最終的には最高位の「自己実現」に向かっていくという理論になっています。この欲求5段階説の理論は、これまでご紹介してきたマーケティング1.0~4.0の変遷にもあてはまります。
コトラー氏はマーケティング3.0の段階で「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「尊厳欲求」は満たされていると説いています。そのためマーケティング4.0では「自己実現欲求」の実現に向けて、「顧客一人ひとりの可能性を引き出し、自分の願いを叶えてくれる」商品やサービスが求められるようになりました。
また、2010年代はSNS・ブログの普及により、消費者は自ら情報発信を行うようになりました。その結果、企業の宣伝情報よりも、実際に商品やサービスを使用したユーザーの口コミを重視するようになったため、企業は商品購入後のプロセスまでフォローする必要が出てきました。
具体的には、購入後も顧客との接点を持ち続け、顧客を自社商材やブランドの「ファン化」させるというものです。既存顧客をファン化させることで、熱狂的なファンによる口コミやSNS投稿によってコストをかけずに新規顧客を獲得することできます。
つまりマーケティング4.0は、消費者に商品を購入してもらうのが最終目標ではありません。商品・サービスの利用を通して自社のファンになってもらい、SNSを利用して商品の推奨や拡散をしてもらうことをゴールにしているのが大きな特徴です。
セールスとの違い
マーケティングとセールスは、自社の製品・サービスを販売して収益向上を図る活動ですが、その意味や目的はそれぞれ異なります。本項ではマーケティングとセールスがどのように違うのか解説します。
まずマーケティングは先述したとおり、企業活動において商品やサービスが売れる仕組みの構築です。市場調査や商品開発をはじめ、営業、宣伝、販売や販促に至るまでの一連のプロセスを表します。
マーケティングでは、1人でも多くのユーザーに自社の商品・サービスを知ってもらい、興味や関心を抱いてもらうことが大切です。ゆえに常に市場全体の動向やニーズに適した施策を実施する必要があります。また既存顧客と長期的な関係性の維持も求められます。
一方、セールスは顧客に商品やサービスを販売し、売上を上げることを指します。顧客のニーズに合わせて自社商材を提案し、購入・成約まで導くことがセールスのミッションです。購入・成約に至るまでの顧客との信頼関係の構築や維持もセールス活動に含まれます。
セールスは、自社商材に興味関心を持つ見込み客に働きかけ、成約に導くまでが主な業務です。週単位・月単位でノルマが定められていることから、短期間で見込み客へのアプローチを行う活動が中心となります。
マーケティング活動の基本プロセスとフレームワーク
本項ではマーケティングがどのようなプロセスで実施されているのか解説します。マーケティング活動の基本的なプロセスは、次の6つのステップに沿って進められます。
1.市場分析
2.セグメンテーション
3.ターゲティング
4.ポジショニング
5.マーケティングミックス
6.実行と評価
それぞれの項目については下記で詳しく解説していきますが、6つのステップのうち、1~2は「戦略」の立案、3~6の段階は「戦術」として実践していくフェーズに分かれています。あわせて各ステップで役立つフレームワーク(課題を解決するための思考や手法)も紹介します。
1.市場調査
市場調査とは、市場(マーケット)の動向やトレンド、消費者のニーズや自社商材の認知度など、市場や消費者に関する情報を収集・分析し、ビジネス戦略やマーケティング活動に活用するための調査手法です。
マーケティングの実施にあたり、まず最初に実施することは企業内外の環境を観察し、分析することです。自社の強みや弱みの洗い出しや、競合市場での自社の立ち位置を把握でき、これから伸ばしていく点に集中することができます。
市場調査の例として、たとえばビールメーカーが新商品の開発を予定していたとします。新商品を売るためには、事前に消費者のニーズやライフスタイルを調査したうえで商品を開発する必要があります。マーケティング施策に必要な市場の情報を集めることが市場調査なのです。
具体的には以下のようなことを調べます。
- ビールの飲用頻度
- ビールの飲酒量
- どのような場面でビールを飲むか
- 好きな銘柄やメーカー
- ビールを購入する場所
- 月にビールを購入する金額
市場調査には数値化できる情報を収集する「定量調査」や、対象者と対面で質疑応答を行い回答や意見を集める「定性調査」などさまざまな方法がありますが、基本的に初期段階では消費者個人の意見や回答を重視し、アンケート調査などでデータを集めます。その後、より具体的に収集・分析する段階では消費者全体の傾向や統計的な数字を重んじる傾向にあるといわれています。
また市場調査と類似する言葉に「マーケティングリサーチ」があります。マーケティングリサーチは、マーケティング施策を行う前段階の調査を指し、消費者のニーズ調査に加え、「自社商品に合ったプロモーションは何か」「どのような宣伝・PRが効率的か」などの自社商材を売るために必要な調査・情報収集全般までを行います。
マーケット動向の調査のみを行う市場調査と異なり、現状の分析から未来の市場・ニーズ予測まで網羅しているのが特徴です。
位置づけとしては、市場調査はマーケティングリサーチのなかのひとつの手段であるといえます。調査活動の総称はマーケティングリサーチであると認識しましょう。
市場調査で代表的なフレームワークは、「PEST分析」「3C分析」「SWOT分析」の3つです。
【PEST分析】
PEST分析とは、企業自身がコントロールできない4つの外部環境を指します。PESTとは以下の頭文字をとったものです。
P:政治(Politics)…消費税率、規制の強化・緩和など
E:経済(Economy)…景気動向、市場の成長、金利など
S:社会(Society)…少子高齢化、ライフスタイルの変化、流行など
T:技術(Technology)…最新の技術動向など
外部環境は自分たちではコントロールできない分野であることから、事業戦略を立てるうえで一番最初に行うべき分析であるといわれています。特に前例のない新規事業を展開する際は、将来生じるであろうリスクを回避するのに役立つため、非常に重要な分析であるといえるでしょう。
【3C分析】
3C分析とは、主に事業計画やマーケティング戦略を決める際に用いられる分析方法です。3Cとは以下の3つの「C」をとったものになります。
・Customer(市場・顧客)
・Company(自社)
・Competitor(競合)
先に紹介したPEST分析が政治・経済・社会・技術など、外向きの大きなトレンドや変化に注目して市場環境を分析するのに対し、3C分析は自社が直面している競争環境を理解し、戦略的な意思決定を行うためにそれぞれの要素を細かく分析・調査を行い、自社のマーケティング環境をできる限り把握します。
3C分析のメリットは、市場・顧客、自社、競合のそれぞれの分析から「KSF(キーサクセスファクター)」、つまり事業を成功させる要因を発見できることです。外部環境の分析から事業におけるKSFを明確にすることで、成功に向けて自社が進むべき方向性が見えるようになります。
【SWOT分析】
SWOT(スウォット)分析とは、経営戦略やマーケティング戦略立案の初期段階で活用されることが多いフレームワークです。自社を取り巻く内部環境と外部環境を4つの要素から分析し、企業や事業の現状を把握することができます。SWOTとはそれぞれを表す以下の4つの単語の頭文字を組み合わせています。
S:Strengths(強み)
W:Weaknesses(弱み)
O:Opportunities(機会)
T:Threats(脅威)
SWOT分析は、下記の図のように縦軸を内部環境と外部環境、横軸をプラス要因とマイナス要因に分けて分析します。
SWOTの内部環境とは自社を構成するリソースのことで、社内でコントロールできる領域を指します。具体的には、自社が持つ資産やブランド力、品質、ノウハウ、顧客データなどさまざまな要素が挙げられます。内部環境を「強み」と「弱み」に分けて整理することで、既存事業の改善点や新規事業の将来的なリスクの発見につながります。
外部環境とは市場や競合他社の動向など、社内でコントロールできず、自社に影響をもたらす領域を表します。一例として、経営環境の変化・業界の動向、顧客の変化、法律の改正があてはまります。外部環境を「機会」と「脅威」に分けて整理することで、新しいビジネスチャンスや潜在的なリスクを早期に見つけることが可能です。
2.セグメンテーション
セグメンテーションとは、日本語で「市場細分化」と呼ばれ、市場にいる不特定多数の顧客をニーズや属性に基づいてグループ化することを指します。分類の基準となるのは性別・年齢・年収・指向などのユーザーの属性や購入履歴です。またセグメントとは、セグメンテーション分析によって区分けされたグループ群を意味します。
マーケティング戦略では、自社商品・サービスがどの市場のターゲットであればマッチするのか見極めることが大切です。どの市場を狙っていくかで、同一商品の販売でも競合先や売上が大きく変わるからです。セグメントごとに顧客のニーズや属性に合わせた施策を実施することで、その後のターゲティングやポジショニングなどの効率アップが見込めます。
3.ターゲティング
ターゲティングとは、先述したセグメンテーションによって細分化された市場の中から、自社がターゲットとする市場を選ぶことです。
ターゲティングを通じて具体的な市場・顧客層を絞り込むことで、商品コンセプトや強み・弱み、競合との差別化などに有効なマーケティング戦略を立てやすくなります。事業戦略の策定や、顧客のニーズ把握に効果的な手法として、多くの企業で実施されています。
4.ポジショニング
ポジショニングとは、日本語で直訳すると「位置づける」という意味で、自社商品やサービスの独自ポジションを設定し、他社の商品・サービスと差別化するための手法を指します。市場の中で競合との差別化を図ることで、競合に対しての優位性を獲得することができ、より自社のビジネスの成果を出しやすくします。
ポジショニングの代表的なフレームワークには、「ポジショニングマップ」と「STP分析」があります。
【ポジショニングマップ】
ポジショニングマップとは、自社の立ち位置を把握するために使われるフレームワークです。縦軸と横軸で作られたマトリクス上に、自社・競合他社の製品・サービスを配置します。市場の状況や各企業の製品との関係性を視覚的に把握でき、「自社の優位性」や「まだ他社が進出していない空白領域(ブルーオーシャン)」を見つけやすくなります。
ポジショニングマップの活用シーンとしては、既存製品のマーケティング戦略の見直しはもちろん、新規事業の立ち上げや新製品・新サービスの開発段階にも有効です。
【STP分析】
STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つの頭文字を取った、マーケティング戦略の方向性を定めるフレームワークです。
セグメンテーションで市場を細分化し、ターゲティングで狙うべき市場の見極めを行い、最後のポジショニングで競合他社との位置関係を把握します。STP分析を行うことで、効果的なプロモーション戦略のヒントを得られます。
ポジショニングはSTP分析を構成する要素のひとつであり、STP分析の最後に位置しています。企業はポジショニングの結果をもとに具体的な広告戦略や販売方法を検討します。つまり、セグメンテーションとターゲティングが正確だったとしても、ポジショニングで失敗してしまった場合、その後のプロモーションなどで成果が出ない可能性が高くなります。
ポジショニングとSTP分析は深い関係にあり、切っても切り離せない非常に重要な工程です。マーケティング戦略を検討するうえで、慎重に行いましょう。
5.マーケティングミックス
マーケティングミックスとは、企業が顧客に商品やサービスをアプローチするにあたって、マーケティングフレームワークやツールを複数組み合わせる手法です。市場環境の把握やSTP分析を経て策定された分析・戦略結果をもとに、マーケティングミックスでは「実際にどのような施策を行うのか」という具体的な戦略を定めます。
マーケティングミックスはさまざまな観点から構成されるフレームワークですが、分析手法として代表的なものが企業目線に立った「4P分析」と顧客目線による「4C分析」です。
4C分析は4P分析から派生したフレームワークであることから、それぞれの要素間は密接な関係にあります。4P分析と4C分析の両方を行うことでマーケティング戦略の精度を高められます。
【4P分析】
4Pとは商品やサービスを販売する際、顧客のニーズに応える製品を提供するために、「何を」「いくらで」「どこで」「どのようにして売るのか」という自社のマーケティング戦略を立案するためのフレームワークです。製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(ProMotion)の4つの頭文字を取って名付けられました。
4P分析を行うことによって、製品、価格、流通、販売促進それぞれの要素を1つひとつ掘り下げて分析できるので具体的なマーケティング戦略を打ち出せます。
しかし近年ではマーケティング活動の対象が有形の「物」から、無形の「サービス」へと変化していることから、既存の4Pに「サービス」で必要となる3つのPを加えた「7P分析」が登場しています。
・People(人)
・Process(販売プロセス)
・Physical Evidence(物的証拠)
People(人)とは自社に所属する従業員や代理店の社員などを含めた、顧客と接する自社側の人たちを指します。サービス業においては人の品質がサービスの品質に直結するため、高いサービスを提供するための人材戦略が重要であることから追加されました。
Process(プロセス)は、見込み客がプロダクトを購入したり、サービスを導入する際のプロセスを指します。
Physical evidence(物的証拠)とは、顧客に商品やサービスの品質を証明する際の証拠です。有形の「物」とは異なり、サービス業で提供する価値には実体がありません。そこでその価値を測定し、明確な証拠として残すことが大事であるという考え方です。
4P分析はあくまで「物」をベースにした分析方法であることから、メーカーのマーケティングには効果を発揮しますが、無形であるサービス業では使いにくいものでした。7P分析の登場により、サービスを扱う企業でも適切なマーケティング戦略が取れるようになりました。
【4C分析】
4Pが企業側の視点であるのに対し、4Cは顧客側の視点に立ったフレームワークです。顧客価値(Customer Value)、コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)の4つのCの頭文字から取っています。
顧客側目線で商品やサービスを細かく分析することから、自社商品・サービスを選ぶ理由となるポイントの具体化や実際の市場のニーズとズレにくいメリットがあります。
6.実行と評価
5のマーケティングミックスで立案した施策を実行し、効果を測定を行います。評価の際に注意しておくべき点は、施策の良し悪しを単に「良かった」「悪かった」で決めるのではなく、これまでのプロセスを振り返り、具体的にどの点が良かったのか、逆に芳しくなかったのかを特定し、その原因を探っていくことが大切です。
たとえば「セグメンテーション・ターゲティングまでは良かったが、ポジショニングの分析・設定が甘かった」などの原因が特定できれば、なぜポジショニングがうまくできなかったのがが再考され、次回のプロジェクトの際に同じような失敗を防ぐことができます。
また集客から商談や受注に至るまでの、実行ステップごとにKPIを設定するのも有効です。想定したよりも施策効果が振るわなかった場合、各ステップのどこにボトルネックがあったのかを発見しやすくなります。
注目を集めるデジタルマーケティング
デジタルマーケティングとは、端的に言うと「デジタルデータを活用したマーケティング」のことです。近年インターネットの発展やスマートフォンの普及により、消費者の行動データをWeb上でも取得できるようになりました。
コロナ禍を機にさまざまな分野でデジタル化が進んでおり、いまや企業の発展にデジタルマーケティングは欠かせない時代となっています。そこで本章では、いま注目を集めるデジタルマーケティング、Webマーケティング、SNSマーケティングそれぞれの手法について解説します。
デジタルマーケティングとは
デジタルマーケティングとは、先述したようにデジタル技術を利用したマーケティング活動の総称です。具体的には、WebサイトやWeb広告、SNS、メルマガ、アプリ、デジタルサイネージ、IT技術、AI技術などあらゆるデジタル技術を指します。リアルイベントの場合は、店舗への来店データや購入履歴などの活動データがあてはまります。
これまでのマーケティングでもデータ分析は行われていましたが、あくまで集団を対象にしたアンケート調査やインタビュー調査程度を実施する程度で、それらの回答からおおよその傾向を把握するのに留まっていました。
しかし、デジタルマーケティングは、個人レベルの細かいデータを自動で取得・解析できます。従来のマーケティング調査に比べ、ユーザーの活動データを正確かつリアルタイムに把握することが可能です。
Webマーケティングとは
Webマーケティングとは、Webサイトを用いたマーケティング活動のことです。Webサイトで集客を行い、最終的に商品購入やサービスの問い合わせなどのコンバージョンにつなげる一連の施策が該当します。
代表的な施策としては、SEOやWeb広告、CRO(コンバージョン率最適化)、EFO(エントリーフォーム最適化)などが挙げられます。また、Webサイトをリニューアルし、Web経由の商談獲得や引き合いを増やすのもWebマーケティングの施策の1つです。
Webマーケティングはデジタルマーケティングと混同されがちですが、WebマーケティングはWebサイトをチャネルにしたマーケティングであり、Webサイトに訪れたユーザーの属性や行動履歴、アクセスした媒体の種類など、Web上で取得できるデータを活用します。
SNSマーケティングとは
SNSマーケティングとは、TwitterやFacebook、LINE、Instagramなどのソーシャルメディアを用いて、商品・サービスの認知やブランディングを図るマーケティング手法です。
SNSの普及率は年々高まっており、特に10代~30代のSNS利用率は約8割を超えています。SNSはいまやなくてはならないメディアとして認知されており、企業のプロモーション活動において外せない要素のひとつです。
SNSマーケティングのメリットとしては、企業が公式アカウントとして運用することで、SNSユーザーの属性(年齢や性別、所属コミュニティなど)をデータとして収集し、マーケティング活動に生かせる点です。またSNS上には商品やサービスを利用したユーザーの実際の感想や口コミが数多く投稿されています。嘘偽りのないユーザーのレビューをリアルタイムで閲覧できるのも従来のメディアにはない特徴といえるでしょう。
さらにSNSで影響力を持つインフルエンサーを起用し、自社商品やサービスを紹介してもらうことで、商品やブランドに対する認知や購買意欲の向上を実現することができます。
マーケティング活動を成功させる3つのポイント
最後に本章ではマーケティング活動を成功させるために必要な3つのポイントについて解説します。
1.顧客1人ひとりのニーズに沿った施策を行う
従来はテレビCM、新聞、雑誌、屋外広告などの4大メディアを活用し、幅広い層に向けて画一的なアプローチを行うマスマーケティングがメインでした。しかし、現代はインターネットやスマートフォンの普及により、場所や時間の制約を受けず、さまざまな情報にアクセスできるようになり、顧客の購買行動にも大きな変化が生じています。
今後も顧客に求められる商品やサービスを提供するには、ターゲット1人ひとりのニーズを把握し、個々のユーザーの属性や興味に合わせて、最適なサービスやコンテンツを提供するパーソナライズされたマーケティングが大切です。
マーケティング施策の中でも、Webマーケティングやデジタルマーケティングは、会員情報や過去のアクセス履歴をもとに顧客1人ひとりに合わせたマーケティングが可能です。
たとえばWebマーケティングであれば、顧客ごとに最適化された施策を打つ「One to Oneマーケティング」や、大口顧客など特定の企業に絞ってアプローチを仕掛ける「アカウントベースドマーケティング(ABM)」などが最適です。顧客に合わせた施策を実施することでCX(顧客満足度)向上を図りつつ、マーケティングの効率化が見込めます。
2.顧客へのフォロー体制を整える
マーケティングで成果を出すには、顧客のアフターフォローも重要です。なぜなら顧客と長期的な関係を維持することで、その後も自社商品やサービスを利用するリピート顧客(リピーター)になりやすいからです。リピート顧客は新規顧客獲得よりもコストがかからず、一般的な顧客に比べて約20倍の売上をもたらすといわれています。
企業が安定した収益を確保するためにも、リピート顧客の育成は不可欠です。顧客の不満や要求を解決できる環境を構築することで、自社商品やサービスの継続的な利用につながり、顧客が競合他社に流れるリスクを回避することができます。
フォローアップの方法としては、サポートセンターの設置やメール・チャットボット(自動会話プログラム)を自社サイトに導入するなどの対策が考えられます。
3.デジタルツールの活用
マーケティングの多様化に伴い、業務効率化を目的としたデジタルツールが数多く登場しています。代表的なツールでは、MA(マーケティングオートメーション)、CRM(顧客管理)、SFA(営業支援)などがあります。これらのツールを活用すれば、各種のマーケティング活動を効率よく、かつ効果的に行うことが可能です。
・MAツール
MAツールとは、マーケティング活動を可視化し、見込み顧客(リード)の獲得~育成や、営業がアプローチすべきリードの抽出といった一連のマーケティング活動を自動化・効率化できるデジタルツールです。
具体的には、問い合わせや展示会、セミナーで企業が獲得した見込み顧客(リード)を育成し、受注確度を高めた状態で営業部門に渡すまでの流れを自動化・仕組み化します。
潜在顧客のそれぞれの興味・関心・行動に対して「最適なコンテンツ」を「最適なタイミング」「最適なチャネル」で提供するマーケティング活動には、膨大なマンパワーが必要になります。この人的なマーケティングのオペレーション部分を効率化・自動化するために開発されたのがMAツールです。
クラウドサーカスでは無料で使えるMAツール「BowNow」を提供しています。
・CRMツール
CRMツールとは「顧客関係管理」を支援するツールで、顧客情報の一元管理や顧客情報分析、プロモーション管理機能などを搭載しています。顧客の購買情報や問い合わせ履歴を一元管理することで、営業やマーケティング活動を通じて、顧客との関係構築を行うことができます。
また顧客情報をもとに顧客の好みにあわせた商品をメルマガで勧めたり、自社商品の有益な情報を発信でき、CX向上や企業への信頼度を高められます。より顧客のニーズに即したアプローチが可能になるため、既存顧客の維持や優良化に適しています。
代表的なツールでは「Zoho CRM」や「Mazrica Sales」が有名です。
・SFAツール
SFA(営業支援)ツールは、営業活動の効率化に特化したツールです。顧客管理、案件管理、商談管理、行動管理、外出先のサポート、予実管理管理の機能などを備えており、営業活動の標準化や可視化が実現します。
メリットとしては、属人化の回避が挙げられます。SFAに案件情報や商談情報が蓄積されていくため、営業チームで顧客情報を共有でき、担当者が外出中で不在でも別の担当者が代わりに対応することが可能です。そのほかにも過去の類似案件データから勝ちパターンを分析し、商談の成功率を高めることができます。
SFAツールでよく導入されているのは「Sales Cloud」や「Sales Hub」です。
まとめ
本記事では、マーケティングの基礎知識から活動内容、戦略の手順、フレームワークまで網羅的に解説しました。
これまでお伝えしてきたように、マーケティングの本質であり要諦は「商品が自然と売れる仕組みを構築すること」です。そのためには顧客の考えや置かれた状況を把握し、どのような商品・サービスが求められているのか常に検証しながら、具体的な戦略を打ち立てることが大切です。
自社のスタイルやブランドイメージ、事業内容など総合的に判断し、最適なマーケティングを行っていきましょう。