ホワイトペーパーとは、Webサイトのなかで「お役立ち資料」「Ebook」などの項目で掲載され、個人情報の入力と引き換えにダウンロードを促すコンテンツのことです。多くはPDF形式のファイルで配信されており、内容は自社のノウハウやデータ資料などが挙げられます。
マーケティング施策としてホワイトペーパーを取り入れると、リード情報を獲得できたり、リードの興味・関心の高さを測れたり、上質な情報を提供すればリードとの信頼関係を構築できるなどのメリットがあります。そのため、現在はBtoB企業を中心に多く取り入れられており、ホワイトペーパーの作成代行を行う企業も登場しています。
本記事では、そんなホワイトペーパーの概要から目的、事例などをご紹介いたします。弊社が実際に提供しているホワイトペーパーもいくつか掲載しておりますので、ぜひそちらも参考にしてください。
1.ホワイトペーパーのWebマーケティングでの意味
まず初めにホワイトペーパーの意味について改めてご紹介します。
ホワイトペーパーの元々の意味は?
そもそもなぜ「ホワイトペーパー」と呼ばれているのか、不思議に思った方も多いのではないでしょうか。ホワイトペーパーとは、もともと政府や公的機関が発行する「白書」という意味で、実情を調査・報告する書類を指していました。今でこそマーケティング用語としての印象が強いですが、元々は別のニュアンスで使われていた言葉なのです。
Webマーケティングにおけるホワイトペーパーとは
一方、Webマーケティング用語として使われる「ホワイトペーパー」は、 商品・サービスに関連する「役立つ情報をまとめた資料」 を指しています。Webサイトのなかでは、「お役立ち資料」「無料資料」などの項目で掲載されることが多く、資料の内容は、そのサービス分野の情報を求めているユーザーのニーズにあったノウハウ解説やデータが一般的です。多くはPDF形式のファイルで配信されていますが、電子ブックなどを活用してリッチな見せ方をしている場合もございます。
2.ホワイトペーパーの目的
ホワイトペーパーは、主に見込み顧客のWebサイトへの集客や、リード情報を得るための施策として使われています。
一般的に、ホワイトペーパー資料をダウンロードしようとするとメールアドレスや会社情報、サービス導入の検討度合いなど、個人情報の入力を求められます。資料の提供会社は、無料で情報やノウハウを提供するのと引き換えに見込み顧客のリード情報を得られる仕組みになっているのです。
ホワイトペーパーの活用が増えている理由の1つとして、消費者の行動のプロセスが変化し、従来のプッシュ型の営業活動だけでは思ったような結果が出せなくなっていることが挙げられます。そのため近年は、潜在的なニーズを持った見込み顧客の情報を得て育てる「リードナーチャリング」が重要になっており、その育成するリードを獲得するために「ホワイトペーパー」の存在が非常に重要となります。。
ホワイトペーパーのダウンロードで獲得したリード情報は、その後、セールス部門がフォローやアプローチを行ったり、メールマーケティングやインサイドセールスの活動を通して潜在層から顕在層まで育成(ナーチャリング)したりすることで活用されていきます。
商品やサービスの購入を検討しているユーザーにとって、いきなり「購入」や「問い合わせ」を決定するのは心理的ハードルが高いものです。ホワイトペーパー(資料ダウンロード)は購入に比べてユーザーも気軽にアクションできるため、潜在層のリード情報を広く獲得するのに役立ちます。このように、購入より一歩・二歩手前に設けられたCV(コンバージョン)のことを「中間CV」といいます。
ユーザーにとっていきなり問い合わせするのはハードルが高い▼
段階に合わせてアクションを起こせるように、適切なホワイトペーパーを設置してあげる▼
エムタメ!過去記事
中間CV(コンバージョン)を設置して潜在層のリードを獲得しよう!
また、ここまでリードの数の観点について目的をお伝えしましたが、良質なホワイトペーパーをダウンロードしてもらうことにより自社への印象が良くなったり、専門性の高い企業との評価をもらうこともあります。最近ではホワイトペーパー施策に取り組む企業も増えており、飽和状態になるため、他社とは違うハイクオリティなホワイトペーパーを作成することで、差別化を図ることも可能となります。 顧客との関係構築やエンゲージメントの向上のためにも、ホワイトペーパーの施策は有効だと言えるでしょう。
3.ホワイトペーパーの課題
ホワイトペーパーは、多くのコーポレートサイトやサービスサイトで活用されている手法となるため、「弊社でもやってみよう!」と着手するWeb担当者・マーケターの方も増えています。
しかし実際のところ、「見込み顧客がどんな情報を知りたがっているのか?」「どんな情報であればユーザーにとって価値があるのか?」「どこまでのノウハウを公開していいのか?」などを分析し、会社の各部門と連携を取りながら資料をまとめるのは、なかなか労力がかかります。
特によくある課題としては、制作の時間が割けないことや、そもそも何を作ったら良いのかがわからず進まない、といったことが挙げられます。
そこで次の章では、よくあるホワイトペーパーの種類を制作難易度とともにご紹介します。どんな種類のホワイトペーパーをどう作ったら良いのか、どのホワイトペーパーがどれだけの工数になるのか、少しでも参考になれば幸いです。
4.ホワイトペーパーの種類
さっそく、ホワイトペーパーの種類について具体的に解説していきます。
●サービス資料・カタログ 【制作難易度 低】
サービス資料・カタログは、企業が最初に制作すべきホワイトペーパーとなります。
紙のカタログや会社案内などですでに制作している企業も多いと思いますので、制作自体はそれほど難しいものではありません。自社内の保有部署を確認し、最新のデータを取り寄せるようにしましょう。
●導入事例 【制作難易度 中】
商品・サービスをすでに導入いただいている企業の事例をまとめたホワイトペーパーです。導入済みの企業に取材を行い、導入のきっかけや成果、お客様の声などを掲載するのが一般的です。検討中のユーザーにとって、すでに導入しているお客様の成功事例や体験談は参考にしやすく、ダウンロードされる頻度も多いコンテンツです。しかし、掲載させていただく企業への許可取りや取材、原稿の確認、古くなった情報の定期的なアップデートなど、制作の手間はかかります。
作成に関しては、すでにWebサイトなどに掲載されているものを転用するのがおすすめとなります。
●レポート・アンケート調査 【制作難易度 中】
サービスに関連する分野の実態調査や意識調査などをまとめたホワイトペーパーです。
アンケートや調査を外注する必要があるため、コストはかかりますが、あまり社内工数をかけずに作ることができます。また、情報価値の高い調査結果が得られれば、調査結果に関してプレスリリースを配信することもできます。プレスリリースから情報が拡散し、流入元が増えれば、メディアに取り上げてもらえる可能性や、リファラー(そのデータを参照して自社サイトに流入してくる人)が増える可能性もあります。
しかし、ホワイトペーパーとしては一般的にダウンロード数はあまり伸びず、競合や代理店からのダウンロードも多いのが特徴です。
レポート例:
【2022年1月】WebマーケティングとCMSに関する意識調査
リサーチ・調査を依頼できる主な会社
サービスにもよりますが、質問を考えて出稿すると1ヶ月ぐらいで回答が集まります。
●診断・チェックシート 【制作難易度 低】
会社の状況に応じたサービス導入前のセルフチェックシートや、自社の現状のレベルを判断するための診断など。Excelなどでつくることができるため、制作自体は簡単です。技術系の部門で、実際に使われている確認書類を公開できる体裁に整えるだけでできることもあります。
ただし、具体的に検討している人や目的が明確な人を対象としているため、あまりダウンロード数は伸びないといわれています。
●ガイドブック 【制作難易度 高】
初心者向けに、商品・サービスの関連分野のノウハウを網羅的に学べるようにまとめたホワイトペーパーです。
知識やノウハウを初心者でもわかりやすい言葉で、写真や図を交えて説明する必要があるため、制作の工数はかなりかかります。また、自社独自のノウハウであることが必要なため、外注するのも難しい資料です。
制作難易度は高いですが、ダウンロード数は一番伸びやすい資料であるといわれています。ただし、広く情報収集をしている層など、購買(CV)から遠い層からのダウンロードも多いため、この資料で獲得できたリードはナーチャリング(育成)する必要のあるものが多いのが特徴です。
制作に関しては、もし社内で使用しているセミナー資料や提案資料などがあれば、転用できる可能性がありますので、0→1で作るのではなくまずは素材を探してみることをおすすめしております。
●ノウハウ資料 【制作難易度 高】
テーマに特化し、知識やノウハウを詳しく解説するホワイトペーパーです。
営業部門や運用部門などから、お客様のニーズのありそうな企画を吸い上げるとよいでしょう。他部門の力が必要なことも多く、作成のハードルは高いですが、専門的な知識が得られるためユーザーの満足度も高くなります。
5.ホワイトペーパーの作り方
では、上記のようなホワイトペーパーを作るためには、どのように作業を進めていけばよいのでしょうか?
私たちがおすすめするのは、まずは社内の各部門へのヒアリングを行うことです。営業部門、サポート部門、技術部門などから「お客様とのやり取りで実際によく聞かれること」「よくある失敗例」などを聞き出し、それらの情報をまとめることで、オリジナリティがあり、情報を求める潜在層に役立つ資料となります。
社内ヒアリングのポイント
営業部門に聞く
- お客様からよく聞かれること →チェックシート、アンケート調査などの資料に活かす
- よくネックになること →ノウハウ資料に活かす(課題の解決方法を書く)
- 自社が勝てるポイント →比較表、要件定義書に活かす
サポート部門に聞く
- よくつまずくポイント →「よくある失敗」資料に活かす
- よく質問されること →「Q&A集」に活かす
開発・技術に聞く
- 社内の技術資料・チェックシート →カスタマイズして技術資料・チェックシートに活かす
テーマと内容が決まったあとは、資料の名前を検討することも大切です。潜在層が求める情報をわかりやすく表現し、「役に立ちそう」「ダウンロードしてみたい」と思わせるタイトルの工夫が必要です。
また、これらのホワイトペーパーを1から作ることが難しい場合は、既に社内にある資料の活用もお薦めしています。例えば過去のセミナー資料や、技術情報をまとめた資料などは、そのまま掲載しても価値のあるコンテンツと感じてもらえることがあります。
時間がない中作成するのであれば、できる限り工数を抑えて質の高いものを作れるように工夫をしましょう。
6.ホワイトペーパーをダウンロードした後の仕組みを作ろう
前述したように、ホワイトペーパーの目的は、ダウンロード時にユーザーに入力してもらう個人情報により、潜在的なリード情報を獲得し、営業からアプローチをしたり、ナーチャリングをしたりすることにあります。
しかし、せっかくリード情報を獲得しても、その後のフォロー体制やリード活用の方法が社内で定まっておらず、施策がまわっていない…という課題もよく聞きます。
そのため、ホワイトペーパー施策のPDCAをうまくまわし、目的を達成するためにはMA(マーケティングオートメーション)ツールなどのシステムを導入するのが効率的です。
MAツール「BowNow」には、ダウンロードフォーム作成機能があり、同ツールで作成した入力フォーム経由で資料をダウンロードしたリード情報は自動的にシステムに登録され、条件抽出によるリストの精査や、ナーチャリングのステップをスムーズに進めることができます。
参考リンク
7.ホワイトペーパーの事例
最後に、ホワイトペーパーを活用している各社の事例をご紹介します。
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画像引用元: クラウド会計ソフト「freee」お役立ち資料
クラウド会計ソフト「freee」お役立ち資料
「製品資料」「事例集」「IPO準備・上場準備」「バックオフィス」などのテーマ別に資料を用意。資料のなかには、動画による説明もあります。ダウンロードページには資料の目次を掲載し、ユーザーがこの資料をダウンロードすることでどんな情報が得られるかを明確に示しています。
画像引用元: 名刺管理「Sansan」資料ダウンロード
名刺管理「Sansan」資料ダウンロード
「サービス概要」「活用例」から識者へのインタビュー、最新のマーケティングノウハウを踏まえた「お役立ち資料」など多彩なテーマで展開。資料デザインへのこだわりも感じられます。ダウンロードページでは「こんな人におすすめ」情報や「読了時間」も明記されています。
画像引用元: CMS BlueMonkey資料ダウンロード一覧ページ
BlueMonkey資料ダウンロード一覧ページ
サービス概要を紹介する資料から、Webマーケティング全般のノウハウ、SEOのチェックシートなど、検討中のお客様のニーズを考えた資料が揃っています。
画像引用元: MAツール「BowNow」資料ダウンロード
MAツール「BowNow」資料ダウンロード
サービス概要を紹介する資料から、意識調査レポートなどのマクロデータ、ユーザーが便利に使えるチェックシートなど、検討中のお客様のニーズを考えた資料が揃っています。
8.ホワイトペーパー施策だけでなく全体最適を!
このようにホワイトペーパーを活用した施策は、はじめること自体のハードルは比較的低く、潜在層のニーズを分析し、自社のノウハウを棚卸しすることで資料を作成することができます。
ただし、施策のPDCAをまわし、アフターフォローやナーチャリングを進め、成果を得るためは「社内体制を整える」「ツールやシステムを導入する」「現実的な指標・KPIを定める」などの対応も必要です。目的とフローを明確にして、ホワイトペーパーをうまく施策に取り込んでいきましょう。