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ペルソナとは、簡単にいうとターゲットとなるユーザー像のこと。ペルソナ自体はビジネスにおいて以前から活用されてきた概念のため「もう古い?」とも勘違いされがちです。しかし近年のビジネスの急速なオンライン化・デジタルマーケティングの浸透によって、実はその重要度はますます高まっているのです。
ペルソナは、製品やサービスの開発、マーケティング、カスタマーサポートなど、さまざまな側面で活用できます。実際に、ペルソナマーケティングによって多くの企業が成果を出してきました。
本稿では、ペルソナについての基本知識やターゲットとの違い、ペルソナの作り方から使い方、ペルソナマーケティングのポイントについて解説しています。ぜひマーケティング施策にお役立てください。
「ペルソナ」とは、自社のターゲットとなるユーザー像のことです。ビジネス、とくにマーケティングにおけるターゲット設定のひとつで、自社サービスのターゲットとなる架空の人物を「ペルソナ」として設定します。
設定する内容はたとえば、年齢・性別・居住地・職業・家族構成・ふだんの行動傾向・価値観・ライフスタイル・使用アプリなど…。項目は詳細かつ多岐にわたります。
ペルソナはもともと、製品デザインやソフトウェア開発の領域で、顧客像の解像度を上げて担当者間で共有する目的で導入されてきました。自社が対象とするユーザー像への理解を深めることで、マーケティング方針を統一することができるからです。
ペルソナマーケティングとは、架空のユーザー像「ペルソナ」に最適化した施策をおこなうマーケティング手法です。
従来のマーケティング戦略は、ターゲットを”層”として捉えることが通例でした。たとえば「30歳OLのための化粧品」「日中に時間のある主婦向けの通信教育」など。
しかし近年はインターネットの進化も伴って、ターゲットを絞り込むことでより有効なアプローチをすることが必要な時代になりました。ユーザーの行動や性格、価値観等まで含んだ具体的なターゲット設定が必要になり、マーケティング担当者の間でペルソナ設定の有効性に注目が集まり出したのです。
ペルソナとターゲットの違いは、どこまで細かく要件設定するか、という点にあります。
どちらも、「自社製品やサービスのターゲットとなる人物像を想定する」ことでビジネスに役立てる、という意味で果たす役割は同じです。
ただし、広域に指定されるターゲットに対して、ペルソナはより具体的な人物像を設定します。ペルソナを活用して、特定の個人にささるような的を絞った施策を立てることで、共感性や訴求力を高められるため、マーケティングにおいて高い効果を得られる手法といえます。
おおまかなターゲット設定でも充分では?と考える方もいるかもしれません。しかしユーザーが真に何を求めているかを理解し、ユーザーが欲しいサービスを提供するためには、ペルソナ設定が必要です。
とくに非対面で施策を打つデジタルマーケティングにおいて、顧客が求めていることを知るために、ペルソナ設定は必須項目です。なんとなくのターゲットに対して施策を打つより、ペルソナを活用して高い精度でマーケティング施策を実施することで、より狙った成果に近づけることができます。
ここではペルソナ設定の重要性と、具体的なメリットについて説明します。
ペルソナは、多くの顧客データをもとに設定されるため、顧客視点の解像度を上げるのに有効です。ユーザーの視点に立って、どういったコミュニケーションが最適か測ることで、より効果的な戦略を立てられるからです。
簡単に言えば、「どのような内容のメルマガを送信するか」と考えるよりも、顧客の立場で「どのようなメルマガを受け取ったら読みたくなるか」のように考えることです。
ペルソナを設定することで、顧客の視点をリアルに想像できるのは大きなメリットです。顧客がどのような課題を抱えて、どのように自社サービスに興味関心を持つのか、といったプロセスを可視化することで、マーケティング施策に活かすことができます。
ペルソナを細かく設定するとユーザーを限定してしまい、ニーズを拾いきれなくなるのでは?と不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし実は、自社の象徴的なユーザーのニーズを満たす製品の開発は、自社サービスのユーザーの大多数の満足度を上げることにつながります。
自社サービスを利用するユーザーの満足度を上げることは、安定的な収益確保にも直結していくのです。
多数の部署、分野からメンバーが集まってプロジェクトを進めるうえで、具体的なターゲットとなる人物を共有することは、企画の全体像を把握するうえでも大いに役立ちます。
また特定の人物であるペルソナを共有することで、プロジェクトの方向性を統一しやすくなります。担当者間での認識のズレを最小限に、プロジェクト完了までのスピードを最短にして、成果を最大化できるのもペルソナ設定のメリットです。
明確なペルソナを共有することで、メンバー内での認識を統一することができ、プロジェクトの遂行にかかる時間やコストを最小限にできるのもメリットです。
プロジェクトを進めていくうえで判断に迷うことがあっても、ペルソナを軸にすることで戦略を決めやすくなります。成果を上げるうえで不可欠な要素も明確になることで、ペルソナなしに進めるよりもコストの削減を削減できるようになります。
ペルソナは、感覚的に作るのではなく、データに基づいて正しいプロセスで設定する必要があります。またBtoBとBtoCではペルソナの設定方法は異なるため、ここではそれぞれの具体的なペルソナの作り方を手順に沿って解説します。
BtoBの場合、購買意思決定者は複数人にわたることが通例です。そのため購買プロセスに関与する個人のペルソナ設定・組織のペルソナ設定があり、ペルソナの作り方にも特徴があります。
パーソナルな情報のほかにBtoBで必要になるのは、所属企業における情報です。たとえば、役職や所属部署、勤続年数といった基本情報に加え、業務上の責務や目標、抱えている課題などが必要です。
また、所属企業そのもののポテンシャル情報も重要です。業種や事業内容、社員数、資本金、売上高、経営方針、決算期といった項目をチェックしましょう。
BtoBにおけるペルソナは、窓口となる担当者のペルソナのほかにも、購買意思決定に関与する組織ペルソナが必要です。
まずは、MA・CRM・SFAといったツールに蓄積された定量データを分析します。分析する項目は、既存顧客の業種や企業の規模、部署ごとの受注率や、解約率など。受注単価や継続率の高い、スコアの優秀な顧客企業をいくつか選びます。
次は、選んだモデリング顧客に対する定性的なデータを集めます。「どのように受注に至ったのか」「なぜ自社サービスを利用しているのか」といった項目について、営業やCSなど担当者にヒアリングをおこないます。
これをもとに有効となるペルソナをいくつか設定し、顧客へのインタビューやユーザーテストを実施しましょう。
設定したいくつかのペルソナを、企業ごとの業種や、窓口担当者の役職の属性ごとにグループ分けします。
市場規模や競合性、また顧客の課題や自社が提供できる強みなど、複合的に判断したうえで、受注したいグループを選択します。
②で選択したグループのなかでの共通項を抽出していきます。たとえば、パーソナリティや行動パターンなど。顧客に関わる他部門の担当者にも確認してもらい、完成です。
ほかのグループのペルソナも、同様の手順でおこないます。
BtoCにおけるペルソナ設定では、趣味や家族構成といったプライベートやライフステージを中心に設定していきます。
まずは自社の強みや、競合も含めた市場での立ち位置を把握しましょう。
自社の製品やサービスが、どのような課題を抱えるユーザーに価値提供できるかを明確にしておくことで、正しい方向性でペルソナを設定することができます。
まずは、必要な要素を決めます。年齢・性別・職業…など、自社製品や事業の方向性に対して、必要な項目を設けます。
要素が決まったら、ペルソナを作るのに必要な情報を集めます。自社が蓄積しているデータはもちろんのこと、顧客と直接接する営業やCS担当者へのヒアリングや、新しく顧客アンケート・インタビューを実施することで今まで見えなかった情報が得られることも。
また社外の情報、トレンドやリアルなユーザーの声も積極的に取り入れることで、より実用的なペルソナを作成することができます。
情報が収集できたら、具体的な人物像を描いていきます。
まずは大枠を決めて、詳細情報を肉付けしていきます。完成したペルソナは、実際に活用してから必要に応じて修正し、ブラッシュアップしていきましょう。
ペルソナを作成するうえで注意するべき点を4つお伝えします。
BtoCと同様、BtoBのマーケティングにおいてもペルソナ設定は重要です。
ただし、BtoCとBtoBでは製品・サービスの購買プロセスに差があるため、BtoCと同じペルソナ設定を行っても期待できる効果は半減してしまいます。
とくにBtoBのデジタルマーケティングにおいては、ペルソナを不明瞭にしていることによって最適なコンテンツ配信ができていないケースも少なくありません。ペルソナを定義することで、「どういったユーザーの、どのような課題を解決するサービスなのか」より効果的に訴求できるようになります。
ペルソナ設定は、希望的観測でおこなわず、一次データをもとに設定するのが鉄則です。また抽象的な理想ではなく、数値を用いることでより実用的なペルソナになります。
一次データは、アンケートやインタビューはもちろん、近年はSNSや口コミサイトなどの情報媒体から最新情報を入手することもできます。取得した情報をもとにチーム内で話し合い、すり合わせするのもおすすめです。
ペルソナは、一度作ったら終わりではなく、実施と検証を繰り返し見直すことが大切です。現実のユーザーと乖離がないか、定期的にチェックしましょう。
もちろん製品やサービス、事業戦略に変更がある場合はもちろん、描いたペルソナにズレを認識した場合は、その都度再設定します。
ペルソナはひとつの人格として、社会や環境の変化とともに日々変わっていくもの、という認識で、柔軟にアップデートしていくことが大切です。
ペルソナをよりイメージしやすくするのに、画像や動画などの視覚情報を共有することは非常に効果的です。たとえばペルソナとなる人物の写真や、住んでいる家の写真などを共有することで、チーム内での認識のズレを軽減できます。
また、チーム内のだれもがイメージしやすい身近な人物を参考にすることで、ペルソナをさらに具体化することができます。
ペルソナをマーケティングに活用することで、どのような成果が出せるのでしょうか。ここでは具体的な使い方の例を3つご紹介します。
CVR(コンバージョン率)の改善においても、ペルソナは重要な役割を果たします。ペルソナ設定に沿ってコンテンツの内容を最適化できるからです。
ペルソナという軸で、コンテンツのタイトルや内容、ユーザーが現在どのような心理状態で、コンテンツを読むことでどのように心理状態が変化するかを見直します。
ペルソナを設定することで抱える課題が明確になり、ユーザーがCVするまでにどのようなプロセスをたどるかを具体化できるため、CV率を改善しマーケティング施策の効果をより高めることができます。
自社のWebサイトやSNSの運営において、ペルソナの設定は重要です。
まずはペルソナに焦点を当て、ペルソナが検索するであろうキーワードを特定します。企業の事業や採用に関連するキーワードを調査して検索されやすいものを選定し、SEOによってユーザーがコンテンツにアクセスしやすいよう動線を作りましょう。
また、ペルソナが検索するであろうキーワードに関連する、有益かつ価値の高いコンテンツを作成します。たとえばブログ記事、ウェブマガジンの記事、ガイド、資料など。この中にペルソナがコンテンツを閲覧した際のCVポイントを設定することで、効率的なコンテンツ改善が実現します。
年齢や性別またその他の属性によって普段から利用するSNSは異なります。ペルソナによって最適なWeb広告、SNS、動画共有サイトなどのプラットフォームを選ぶことで、確度の高いアプローチが可能です。
たとえば若年層・ビジュアル志向のユーザーはInstagramやTikTok、ビジネスプロフェッショナルをターゲットとする場合はLinkedInが有益かもしれません。また同じ層であっても、トレンドを把握するときはTwitter、視覚的な情報を得るときはInstagramといったように、ペルソナがそれぞれのシーンで利用する最適なプラットフォームを検討します。
SNSマーケティングにおいてもペルソナは重宝します。ペルソナの特性や行動パターンを可視化することで、特定のプラットフォームに焦点を当てたコンテンツ戦略・広告戦略を構築しやすくなるからです。
ペルソナを作るのはむずかしそう…そんなときはペルソナを簡単に作成できるツールを使って、コツをつかんでみてはいかがでしょうか。
ぺるそな君は、世代と性別を入力するだけでペルソナが作れてしまう簡単ツール。ペルソナをまだ作ったことがないという方におすすめのツールです。
通常ペルソナを作っていく手順とは逆で、すでにツール側が設定しているペルソナの中から自社のユーザーに近いものを選択していきます。最初、ペルソナをどんなふうに作っていいかわからないという方にとって非常に参考になるはずです。
ぺるそな君
Adobeが提供するペルソナ作成ツールも、あらかじめ用意されたペルソナの中から自社製品のターゲットとなりそうなペルソナを選択するツールで、初心者の方に使いやすい仕様となっています。
使いやすい無料テンプレートも揃っており、手軽に始められるのもいいところです。
無料ペルソナ作成ツール・テンプレート
HubSpotが提供する無料のペルソナ作成ツール。フォームに沿って、ペルソナの名前、年齢、業種や企業規模、役職、上司の役職などのプロフィールから、抱えている課題や目標を設定していきます。
アイコン付きのわかりやすいカード形式で表示され、ペルソナごとに情報をみやすく整理できるので、多くのペルソナを使い分けるときなどにもおすすめです。
ペルソナ作成ツール
chatGPTを使って、簡単にペルソナを作成することができます。ペルソナのことについて質問しながら進めていくと、思わぬ発見があるかもしれません。
まずは生成する項目を決めます。設定する項目によって、ペルソナのライフスタイル、価値観や行動パターンが見えてきます。ここにペルソナでよく使われる一例をご紹介します。
①基本情報(年齢、性別、居住地など)
②職業(大学・学部、業種・役職、最終学歴)
③生活パターン(起床時間、通勤時間、勤務時間、就寝時間、外食派or自炊派、休日の過ごし方)
④性格(価値観、物の考え方)、生活での実感(困っていること、興味があること)
⑤人間関係(恋人・配偶者・子供の有無、家族構成)
⑥収入、貯蓄性向
⑦趣味や興味(インドア派orアウトドア派、友人間での流行等)
⑧インターネット利用状況・利用時間
⑨所持しているデバイス
⑩流行への感度
前項で決めた項目に対して、自社製品のターゲットユーザーが検索しそうなキーワードからペルソナの生成を指示します。
たとえば自動車部品を提供する製造業の企業であれば、「自動車部品」を検索するユーザーのペルソナを作成するように指示を出すと、このようにペルソナを作成してくれます。
また検索意図についても深堀することで、ユーザーニーズの解像度を高くしていきます。ここに製品やサービスの詳細などを追加することでより精度を上げることもできますが、chatGPTに機密情報は入力しないようくれぐれも注意してください。
ペルソナについて解説しました。ペルソナを設定して顧客のリアルなニーズを可視化することは、最適な製品やサービスを開発する手助けとなるだけでなく、マーケティングにおいて成果を出すうえでも非常に有益なデータとなります。
何から始めていいかわからないという方は、検索エンジンやSNSでユーザーのリアルな声を集めてみることで、新たなニーズの発見があるかもしれません。また、声は集めたけれどどのようにペルソナを作ってよいかわからない、という場合は、chatGPTやペルソナ作成ツールで簡易的に作成してみて、コツをつかんでいくのがおすすめです。
見えてきたターゲット層の特性の輪郭を掴むことができれば、あとはそれをさらに深堀できるような細かい調査・分析を繰り返します。より具体的かつ実在しているかのようなペルソナができ上がります。ユーザーが求めているものは「モノ自体」ではなく、その「モノがもたらす価値」です。
ペルソナを設定するには少なからず調査や分析・作成の手間がかかりますが、効率的な戦略には不可欠なものです。また、ターゲット層の具体的な設定をいかに正確・的確に出来れば、莫大な広告費用の無駄を削減することだって可能なのです。
ペルソナ設定で、ワンランク上のマーケティングを目指しませんか?