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マーケティング計画とは、企業が製品を販売する際、どのような施策をどう行うのか、具体的に示したプロセス・計画書のことです。計画を立てることで、限られたリソースを有効活用しながら、効率的に目標達成を目指せます。
競争が激化するBtoB市場で成功するには、単に商品やサービスを提供するだけでは不十分です。顧客のニーズを理解し、効果的なアプローチを行うためにマーケティング計画が必要となります。
本記事では、マーケティング計画の基礎知識や、効果的な計画の立て方などについて解説します。また、すぐに役立つテンプレートもご用意していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
マーケティング計画とは、企業のマーケティング戦略を具体化したプロセスや文書のことを指します。目標達成に向けた行動計画を可視化することで、チーム全体の方向性を統一でき、効率的なマーケティング活動が実現します。
現状と目標値を比較しながら施策が進められるので、問題点や課題を発見しやすくなり、修正することも容易になります。さらに計画書を作成すれば、チームメンバーの役割分担が明確になり、共通の目標に向かって協力し合うための基盤にもなるでしょう。
マーケティング計画とマーケティング戦略は、密接な関係にありますが、混同されやすい言葉でもあります。
マーケティング戦略とは、「何を成し遂げるか」といった方向性を示すものです。「どのような顧客に対して、どのような商品・サービスを、どう販売していくのか」という大枠の方向性のことを指します。
一方、マーケティング計画とは、「どのように成し遂げるか」という具体的な行動計画のことです。戦略を決めた後に「実際にどう行動するのか」といったプロセスに落とし込んだものをいいます。
つまり、マーケティング計画はマーケティング戦略を実現するための具体的な手段といえるでしょう。マーケティング計画を作成する際は、まず戦略を明確にすることが大切です。方針が定まっていない状態で作成してしまうと、方向性を見失い、失敗する可能性が高くなります。
【マーケティング戦略とマーケティング計画の一例】
ここからは、マーケティング計画の立て方について10のプロセスに分けてご紹介します。
まずは目的・目標を明確にします。新規顧客の獲得や既存顧客の育成、製品認知など社内で課題になっていることを洗い出しましょう。関わるすべての部署が認識できるよう、シンプルでわかりやすい目標設定にすることがポイントです。
競合や市場分析を行い、自社の立ち位置や優位性を把握します。分析する際には、フレームワークを活用するとあらゆる角度から現状を整理できます。
詳しいフレームワークについては、後述の「市場分析に役立つフレームワーク」にてご紹介していますので、課題に適した手法を探してみてください。
さらにBtoB企業の場合は、競合サイトを分析することも不可欠です。ターゲット層のニーズを効率よく把握でき、自社サイトの改善、SEO対策にも有効です。
自社サイトの分析以外にも、成果を上げている競合の戦略を推測したり、商品やサービスの課題を発見したり、さまざまな改善にも役立ちます。
市場の分析ができたら、ペルソナを設定して具体的なターゲット像を明確にしましょう。ペルソナとは、年齢・性別・居住地・職業・家族構成・ライフスタイルなど細かく決めて仮想のターゲットを設定することです。ターゲット層のニーズを把握しやすくなり、具体的なマーケティングの方向性が決定します。
ペルソナが確認できたら、カスタマージャーニーも作成しましょう。カスタマージャーニーとは、顧客が商品を認知して購入するまでの思考の変化や行動を可視化したものです。
これらを明確にすることで、ターゲットがいつ・どのような課題を抱えるのかがわかります。顧客視点に立って客観的に分析することで、効果的なマーケティング戦略が組み立てられます。
いままでのプロセスを踏まえて、マーケティング計画のベースとなる戦略を設定し、チーム全体で共有します。STEP1で決めた目標を達成するために、どのようなマーケティング活動を実行すればいいのか、その道筋を決めましょう。
BtoBマーケティングは、単純に製品の認知を高めれば売上につながるわけではありません。顧客のニーズに合わせて、どのような価値をどのタイミングで提供するのか、戦略を立てて行うことが重要です。
また、過去のマーケティング活動を見直して、うまくいったこと、うまくいかなかったことを振り返るのも大切です。なぜ成果につながらなかったのか、改善するためにどうすればいいのかを分析し、新しい戦略のヒントにしましょう。
マーケティング戦略に合わせて、中間指標となるKPI(重要業績評価指標)を設定します。KPIで目標を数値化することで、成果を客観的に評価できます。未達成の場合は戦略の改善が必要です。定期的に見直しながら、効率よく目標達成を目指しましょう。
以下はマーケティングにおけるKPIの一例です。
全体像が見えてきたら、計画をカレンダーに落とし込みます。年間のスケジュールを確認すると、いつ展示会を実施すべきか、広告はいつ頃までに出稿するのかなど、より具体的な行動計画が見えてくるでしょう。
たとえば、BtoB企業なら決算期に受注が集中することを想定して、1?2月までに商談を本格化し、3月の目標値は高めに設定するなど、長期的な予測がつくようになります。
限られた予算をどのように配分していくのかも、戦略に基づいて検討しておきます。売上目標を確認し、そこから逆算してマーケティングの目標値を導き出し、達成するための予算を算出します。
既存の施策と比較し、効果が出ていないものがあれば削減して新規施策にあてましょう。費用対効果と合わせて経営層に伝えれば、予算の合意が得やすくなります。
当社では、実務で活用できるテンプレートをご用意しています。マーケティング予算の考え方も記載していますので、予算計画に悩まれている方はぜひお役立てください。
施策を開始する前に、マーケティング計画書を作成しましょう。目的や方向性、ターゲット、スケジュールなどをシンプルにまとめて、可視化することでチーム全体の意識が統一されます。効果や必要性など、経営層が興味のある項目も入れ込んでおくとよいでしょう。
どのように作成したらいいのかわからないという方は、テンプレートの利用がおすすめです。Microsoft社の「戦略的なビジネス マーケティング計画」や、HubSpot社の「マーケティング計画書テンプレート」など、無料でダウンロードできるテンプレートもWeb上に公開されているので活用してみてください。
計画書を作成したら、いよいよ施策を実施します。BtoB市場は移り変わりが早いため、計画どおりに進んでいるか、どこか停滞していないかなど、運用開始後も経過観察を続けましょう。
進捗状況を確認しながら効果測定を行います。PDCAサイクルを回して計画と実績を比較しましょう。計画どおりに進むことが理想ですが、最初からうまくいくことはありません。顧客の声を大切にしながら、計画を最適化していきます。
マーケティング計画を立てるときは、チームで意見を出し合い、情報を共有しながら進めることが大切です。計画を成功させるために、以下のポイントを抑えておきましょう。
マーケティングの方向性が見えてきたら担当者を決め、必要に応じて人材を補充したり、外部へのアウトソーシングを検討したり、作業分担を確認しましょう。計画にブレが生じないよう、社内外問わず連携しながら、共通認識を持って進めることが重要です。
チームメンバー同士で、さまざまなアイデアを出し合うことも新しいマーケティング計画には必要です。話し合いを続けることで、いままでの戦略にはなかったようなクリエイティブな考え方が生まれるかもしれません。
責任者を中心に経歴や経験が異なるメンバーとブレーンストーミング(ブレスト)を行い、自由な発想で多角的にアイデアを出し合いましょう。お互いをよく知ることもでき、チームの結束力も高まります。
ここからは、競合・市場分析に活用したい代表的なフレームワークについてご紹介します。
SWOT分析とは、自社の強み・弱み(内部環境)と、市場や競争における機会・脅威(外部環境)を分析するフレームワークです。 Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの視点から分析を行い、 自社の現状と競合や市場の将来性を把握します。
4P分析とは、Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販売促進)を考える手法です。「何を・いくらで・どこで・どのように」売るのかを分析すると、商品の特性や品質、価格帯、販売ルートなどが明確になります。この4つをまとめて整理することで、一貫性のある思考でマーケティング活動に取り組めます。
3C分析とは、Customer(顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)の3つの要素を分析するフレームワークです。市場やニーズを分析し、競合他社の製品と比較して自社の強み・弱みを見つけます。
自社ならではの優位性や魅力である、KSF(重要成功要因)を明確にし、競合他社に負けない強みを示すための手法です。
最近では、Customer(中間顧客)・Community(地域)、あるいはContext(社会背景)・Collaborator(協力者)をプラスした「5C分析」も活用されるようになりました。デジタル化によるマーケティング環境の変化から、より多角的な分析ができる5C分析が主流になりつつあります。
STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)からなるフレームワークです。この分析で、ターケ゛ットの絞り込みや市場における自社の立ち位置がわかります。
自社のアピールポイントも明確になるので、上手に活用して強みをいかしたマーケティングを展開しましょう。
マーケティング計画が失敗してしまう原因はいくつか挙げられます。事前によくある失敗を確認して、マーケティング計画を成功へと導きましょう。
施策に集中するあまり、実施すること自体が目的になってしまう場合があります。本来の目的は事業の目標達成です。多岐にわたるマーケティング業務の中で、本質的な目的を見失わないように注意しましょう。
そのためには、「この施策は何のために行っているのか」を常に確認しながら進めることが大切です。長い間実施している施策の中にも、ニーズと合わなくなっているものがあるかもしれません。目的が可視化できる「KPIツリー」を作成して、関係性を明確にしておくのもひとつの解決策です。
マーケティング計画の全体像が見えていないと、その場しのぎの施策になりがちです。計画がどこに向かっているのかが不透明で、一貫性のないマーケティング活動になってしまいます。
俯瞰できていない原因のひとつは、目標達成に必要な成果と施策の関係性が可視化されていないことが挙げられます。
このような状況に陥らないためにも、先述した「カスタマージャーニー」で顧客との接点を確認することが大切です。それぞれの施策が、顧客のどのフェーズにどのような効果があるのかを明確にすると全体的な計画の整合性が図れるでしょう。
そのうえで年間の計画書を作成して、全体像を把握しながら進めてください。
目標達成していない計画途中で、すでに予算がオーバーしてしまう場合があります。売上を上げてコスト回収できればよいですが、予想以上にオーバーしている場合は、利益を圧迫してしまうため計画の見直しが必要です。
広告費を見直したり、費用対効果を分析して施策を精査したり、低コストで進められるよう手直しをしましょう。市場環境や顧客のニーズは常に変わります。マーケティング活動も柔軟性のある投資を行うことが重要です。
しっかりとしたマーケティング計画を立てることで、目標達成の確率向上やチーム全体のモチベーションのアップなど、さまざまなメリットが期待できます。自社に合ったマーケティング計画を立て、効率のよい目標達成を目指しましょう。
計画を可視化するには、マーケティング計画書の作成が不可欠です。計画書は、フォーマットが決まっているわけではありませんが、テンプレートを活用すれば、漏れなく必要な項目を盛り込むことができます。